CSR(企業の社会的責任)とは
このごろ多方面から伝わってくる、企業の無責任な行動。その増加に伴って、企業の社会的責任の実現を求める動きが強まっています。
不祥事をキッカケにして、企業の姿勢を問うと共に、その対応を新しい企業の評価基準としようとしている社会の動きに関心が高まっています。今回の「いまさら聞けない経済用語シリーズ」では、この社会の流れの中で使用される「CSR(企業の社会的責任)」について解説します。
CSRとは?SRIとの違いは?
「2003年はCSR元年だった」と関係者の間で言われているほど、急に耳にするようになった、「CSR」という言葉。
「CSR」は、「Corporate Social Responsibility」の頭文字をとった表現です。日本語では一般的に、「企業の社会的責任」 と言われています。
そもそも、CSRには明確な定義はありません。企業に昔からあった、企業理念や経営理念をそのまま置き換えてしまうことも出来ます。企業は今までも、社会に対してさまざまな貢献を通して社会的責任を果たしてきました。製品やサービスを提供すること、雇用の創出をすること、税金を納付して金銭的に貢献すること、メセナ活動を通じた文化・芸術の提供などが挙げられます。
ところで、CSRと似た言葉で、「SRI」という言葉を聞いたことはありませんか?
「SRI」は、「Socially Responsible Investment」の頭文字をとった表現です。こちらは、日本語では「社会的責任投資」 と訳されることが多いようです。
企業に投資する際に、従来型の財務分析による投資基準に加えて、社会・倫理面および環境面から、企業を評価したり選別したりすることです。具体的には、法令遵守や雇用問題、人権問題、消費者対応、社会や地域への貢献などを評価項目とします。
簡単に違いを言い表すと、下記になります。
■CSR=消費者から見た、企業の社会的責任を果たす活動
■SRI=投資家から見た、企業の社会的責任の評価
急にCSRが騒がれだしたワケ
なぜ、この数年、CSRが急に注目されるようになったのでしょうか?
前述のように、以前から企業は、社会貢献活動を行なってきました。決して新しい発想だというわけではありません。今までは、企業倫理や法令を守る(コンプライアンス)ことが企業の責任に対しての中心的なえ方でした。
CSRでは、より広い意味で社会的責任を位置付けています。企業は事業活動を行なう中で、社会的な公正さや環境への配慮などを通じて係わりのある利害関係者に責任ある行動を取るべきだという考えです。利害関係者とは、消費者、取引先、地域社会、株主、従業員などです。
きっかけは、2001年の米国のエンロン社の不正な経理操作の事件です。経営学修士(MBA)ホルダーのエリート達が起こした不正会計事件、これが企業のあり方を問うコーポレートガバナンス(企業統治)重視の経営を求める機運を高めました。
そして今や、(1)企業のグローバル化(2)環境問題(3)消費者の価値観の多様化がCSRの実現を後押ししています。
それらを具体的に見てみると
(1)企業のグローバル化
・インターネットの普及などにより、企業活動はその国のみならず、グローバルに監視されている。
・企業活動そのものが全世界を舞台にするようになり、社会に与える影響も規模が大きくなった。
(2)環境問題
・1970年代に起こった公害問題とは少々性格が異なり、環境に配慮することが企業の価値という側面を持つ。
・70年代の環境問題がマイナス志向なのに対し、現在の環境問題はプラス志向と考える。
・環境問題に取り組んでいる企業は企業経営そのものが付加価値ととらえられる。
(3)消費者の価値観の多様化
・「良い企業」という評価は既存の価値観ではなくなった。
・商品の価格が多少高価であっても、企業理念やコンセプトを重視してその商品を選ぶ消費者も出てきている。